東京医科大学「優秀学位論文賞」
東京医科大学「優秀学位論文賞」は、本学の大学院研究科博士課程教育の高度化を目的として、優れた学位論文(3編)を顕彰するものです。
審査について詳しくは、優秀学位論文賞「審査細則」をご確認ください。
受賞者の公表
本学の大学院博士課程教育の高度化を推進するため、手机上买足彩的app3年度より「優秀学位論文賞」が創設されました。これは、各年度で授与された学位(甲)論文の中からベスト3を顕彰する制度です。
手机上买足彩的app6年度は、学位(甲)論文全32編の中から以下の3氏が選出され、手机上买足彩的app7年6月18日の医学科教授会?大学院医学研究科委員会にて宮澤啓介学長より表彰状と記念品が授与されました。
審査委員は大学院運営委員会委員(学長、副学長、研究科専攻主任?副主任の計12名)より構成され、審査基準として、本学の博士課程ディプロマポリシーに則り、①新たな学理を拓く独創性があること、②自立して研究活動を実践できる能力があること、の二点に重点がおかれ選考が行われました。そのため、論文内容に加え、公開学位審査時の主査?副査と発表者間での質疑応答(Zoom録画)も審査対象となっています。なお、審査時の動画は本学eラーニングポータル「e自主自学」(学内専用)から閲覧が可能です。
<手机上买足彩的app6年度 優秀学位論文賞 受賞者>
岩崎 源(糖尿病?代謝?内分泌内科学) | 奥村 滋邦(救急?災害医学) | 上田 元(内科系 消化器内科学(茨城))

ジョスリン糖尿病センターに留学中
岩崎 源(糖尿病?代謝?内分泌内科学) *手机上买足彩的app6年9月18日修了
Disulfide bonds of thyroid peroxidase are critical elements for subcellular localization, proteasome-dependent degradation, and enzyme activity
(甲状腺ペルオキシダーゼのジスルフィド結合は、細胞内局在、プロテアソーム依存的分解、酵素活性にとって重要な要素である)
■原著論文はこちら>>
■審査時動画はこちら(学内専用)>>
■指導研究室:糖尿病?内分泌?代謝内科学分野
このたび、優秀学位論文賞を賜り、大変光栄に存じます。
本研究では、甲状腺ホルモン産生に重要な役割を果たす甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)におけるジスルフィド結合の重要性を網羅的に検証しました。TPOの酵素活性にはジスルフィド結合が深く関与していると考えられていましたが、これまで包括的な解析は行われておりませんでした。そこで、TPOに存在するすべてのジスルフィド結合に変異を導入し、in vitroで各変異体の酵素活性を評価した結果、全変異体において活性の低下が認められました。この成果により、TPOの機能におけるジスルフィド結合の重要性を明らかにすることができました。
本研究は、臨床診療の現場で発見された新規遺伝子変異を出発点とし、基礎研究へと展開させたものです。思うように結果が出ず苦労した時期もありましたが、糖尿病?内分泌?代謝内科学分野の鈴木亮主任教授、酒井裕幸准教授、諏訪内博紹講師、薬理学分野の金蔵孝介主任教授をはじめ、多くの先生方のご指導とご支援を賜り、このような成果を得ることができました。
現在は海外にて新たな研究に取り組んでおりますが、今後も医学?医療の発展に貢献できるよう、真摯に努力を重ねてまいります。
奥村 滋邦(救急?災害医学) *手机上买足彩的app7年2月19日修了
Spatiotemporal EP4-fibulin-1 expression is associated with vascular intimal hyperplasia
(EP4- fibulin-1の時空間的発現は血管内膜過形成と関連する)
■原著論文はこちら>>
■審査時動画はこちら(学内専用)>>
■指導研究室:細胞生理学分野
この度は優秀学位論文賞を受賞することができ、大変光栄に思います。
本研究は心筋梗塞治療後のステント内再狭窄の原因である血管内膜過形成(IH)に焦点をあてました。IHの促進には、プロスタグランディンE2(PGE2)が関与することが知られていますが、その分子メカニズムは十分に解明されていません。そこで血管傷害におけるPGE2の下流シグナルを解明するために、血管平滑筋細胞(VSMC)特異的EP4ヘテロ接合体欠損マウス、EP4過剰発現マウスと、EP4レポーターマウス、VSMC特異的fibulin-1ノックアウトマウスをもちいて、PGE2受容体EP4および糖タンパク質であるfibulin-1、細胞外マトリックスタンパク質1(ECM1)が、VSMCの増殖と遊走を促進しIHの形成に関与していることを明らかにすることができました。
今回の研究は、細胞生理学分野の横山詩子主任教授、大学院生、助手、教員の先生方をはじめ、分子病理学分野と免疫学分野の先生方、理化学研究所、大分大学の先生方、そして研究する機会を与えて下さった当科の本間宙主任教授により実現することができました。重ねて御礼申し上げます。
上田 元(内科系 消化器内科学(茨城)) *手机上买足彩的app7年3月19日修了
High-fat/high-sucrose diet results in a high rate of MASH with HCC in a mouse model of human-like bile acid composition
(高脂肪高ショ糖食はヒト化胆汁酸マウスモデルにおいて肝細胞癌を伴う代謝機能障害関連脂肪肝炎を高率に引き起こす)
■原著論文はこちら>>
■審査時動画はこちら(学内専用)>>
■指導研究室:内科系 消化器内科学(茨城)
このたびは優秀学位論文賞を賜り、心より光栄に存じます。
本研究では、ヒトとマウスの胆汁酸組成の違いに着目し、当科で開発したヒトと同様の疎水性胆汁酸組成を有するCyp2a12/Cyp2c70ダブルノックアウトマウスを用いて、単純な高脂肪高ショ糖食(HFHSD)のみで代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)および肝細胞癌(HCC)を100%発症させる新規モデルを確立しました。ケノデオキシコール酸(CDCA)によるFXR活性化とHFHSDによるLXRα活性化は、Cyp8b1を相加的に抑制し、さらなる肝CDCA蓄積を促進することで、炎症?酸化ストレス?STAT3活性化を介して発癌環境を形成する病態機序を明らかにしました。本モデルを通じて、MASHの進展とHCCの発生において胆汁酸組成が重要な役割を果たしていることを示しました。
本研究の遂行にあたり、本多彰教授には、研究構想から実験、解析、論文投稿に至るまで一貫して丁寧なご指導を賜りました。宮﨑照雄准教授には、実験手法や解析の過程で的確なご指導をいただきました。さらに池上正教授には、研究全体を統括していただくとともに、随所で細やかなご助言を頂戴しました。心より感謝申し上げます。また、大学院生として研究に専念できる環境を整えてくださった医局員の皆様にも、深く御礼申し上げます。
私は今後、臨床と基礎研究をつなぐPhysician Scientistを目指して、臨床現場の気づきを研究へと昇華させ、病態解明と治療法の開発に貢献できるよう研鑽を積んでまいります。